Century Lovers


 



——野津菊子、28歳独身は、過去に離婚の経験が一度あります。
彼と別れた事を後悔はしていないが、もうきっと彼以上に私を好きになってくれる人は現れないんだろうなあ、とは思っていた。けれど、そんな考えを覆してくれたのが比叡くんだった。比叡くんは私より年が下なのに凄くしっかりしていて、いつだってみんなのお父さんみたいだった。私と違って現実的で、厳しい一面もあったけれど、私がどんな馬鹿なことをしても優しく見守ってくれる、そういう人。

初めは、お固い子だなあなんて思っていた。
まだ見ぬ未来が待っているのに、どうしてあんまり楽しそうじゃないんだろうって、彼を見る度に考えていた。でもそれは違っていて、彼はいつだって今を生きていた。先のこともちゃんと考えるけれど、それ以上に今、この瞬間を大切にしていて、私がもしもの未来の話をした時に必ず否定してくれたんだ。今は私がいる、って。そう言ってもらえる度、死んでしまいそうな程、幸福で胸がいっぱいになっていたなんて、比叡くんは知っているかな。気付いていたかな。気付いていないと、いいな。だって、格好悪いもの!

比叡くん、一緒に来てくれて、有難う。私からは絶対に、きみの手を離さないよ。きみがくれたこの右手の薬指にある指輪が、左手に引越しする時をずっとずっと、夢見てる。女版の松岡修造みたいな私だけれど、きみの前では、ただの野津菊子だから。ただの、恋する野津菊子だから。

バカで、前しか見れなくて、うるさくて、涙腺の弱い私だけど、これからもよろしくしてね。大好きだよ。