チョコレート


 



ちっせえくせに、口と態度だけは達者で物凄く生意気な可愛くない女――オレの抱いた、篁スミレの第一印象。笑えることに、こんな第一印象持たせたこいつのことが、オレは好きで好きで仕方がない。最後だから、諦めて認めることにする。好きだバカ。

顔を合わせれば顰め面。口を聞けば憎まれ事。そんなことばっかりやらかしていたオレ達が付き合えたのはどうしてなんだろうか。それから、オレはどうしてこいつに惹かれたんだろうか。なるほど訳がわからない。恋愛なんて時間と労力と金のムダで、プラスになることなんて何一つ無いと思ってたのに、いざこいつを好きになってみると良い事ばっかで、本当に参った。

誰かの顔を思い浮かべて、一晩眠れなくなるなんて、初めてのことだった。

思いが通じ合ってからもオレらのスタンスは変わらずに、キスひとつするのにも大変だった。つか、キスどころか、手を繋ぐのも一苦労。あいつはオレより恋愛の経験が豊富だから、オレはちょっと、あいつに触れるのが少し怖かった。今までの彼氏より、絶対に色々と下手くそだし、器量も悪いし、車も持ってねーし。だからいつも不安で、オレはちゃんとあいつの彼氏をやれているのか、心配だった。
けど、そういうオレの不安を吹っ飛ばすみたいに、いつも篁はバカなことをしでかして、オレを怒らせて笑わせて――毎日が、幸せで仕方なくて。

いままでのあいつの彼氏や、田島みてーに、お前に笑顔をくれてやれねーかもしれねーけど。車の免許持ってなくてボロいチャリしか持ってねーけど。お前はオレじゃなきゃ、駄目なんだから、これからもずっと隣にいろよ――だって、オレには、お前しかいないんだ。




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