幸福な女


(By野津菊子)

※解釈の仕方によっては野津の負け惜しみ。
またこの設定をチャットに持ち込む事はございません。


友人の結婚式に出席した―純白のドレスに身を包んだ彼女は美しく、私が馬子にも衣装だな、なんて冗談を飛ばしても少しも怒らずに、今日だけ可愛ければそれでいんだと幸福そうに笑っていた。そんな彼女を見て、私も幸福な気持ちになった。

私も、彼と一緒になったあの時、彼女と同じような笑みを浮かべていたのだろうか。――憶えているのは、とても緊張してしまったこと、お祝いの言葉がくすぐったかったこと、ウエディングケーキが食べられない事を知ってガッカリしたことくらいだ。


彼と別れてしまった事は後悔していない。別々の道を歩くことになった直後は、少し悲しかったかもしれないけれど、私達の別離は極自然な事だったように思う。だって私にはエプロンもしゃもじもおたまも、イエスノー枕も似合わない。

彼を愛していた。きっと彼も、私を愛していてくれた。同じような感情を、互いに抱いていたけれど、私たちはまったく、別の人間だったのだろう。まったく、別の考えと価値観を持つ、隣同士が似合わない二人だったんだ。



(今日こそ、忘れずに味噌を買わなきゃなあ。)



少し前の思い出として振り返ることが出来る私は、きっと彼女とはまた別の意味で幸福なんだろう。