11.09.21 // PM 11:59 …


(By内海小槙)




9月21日――白石さんに言われて初めて、この日が自分の誕生日だって気が付いた。自分が9月生まれだっていうのは勿論知っているし、履歴書とか、定期の更新とか、そういう書類に青いボールペンで生年月日なんてしょっちゅう書いてるのに何で忘れていたんだろう。人間とは不思議である。白石さんからカツアゲした飴玉の袋を破って口の中へ放り、ころころと舌で転がしていれば甘酸っぱい味がいっぱいに広がった。

(一氏さんいまなにしてるかなあ)

ふとした瞬間に大好きな人の事を考えてしまう私は相当なスイーツである。少し前の自分だったら、こんなの考えられない。一氏さんを好きになる前の私が考えていることと言えば、私の首と頭にフィットするのは羽毛の枕か、そばがらの枕か、低反発枕かいったいどれがいいんだろうとか、そういうことばっかりだった。

(人間、変わるものだなあ…)

飴玉を転がすのに飽きてしまった私は甘くてまあるいそれを一思いに噛み砕くと飲み込んだ。かつて飴玉だった透き通るカケラたちは1つずつ違う形を保ったまま私の体内へと沈んでいく。19歳を迎えたばかりの体が、美味しい美味しいと言いながら落ちてくる全部を受け入れる。



お風呂に入って、寝間着に着替えて、歯を磨いて布団に入れば、また新しい朝が来るのだろう。19歳になって初めての夜は、そうやって何時もどおりに更けていく。何時もどおり。柔らかい布団に顔を埋めて思うのはやっぱり、大好きな彼のこと。これも何時もどおりだから仕方が無い。習慣なのである。さてさて今日は夢に出てきてくれるだろうか――出てきてくれたとしても、彼がイボ痔になる夢だけはもう勘弁して欲しい。



(――あ、…携帯鳴って……、)


23時59分、夜の静寂に震えたその音は果たして夢の一部なのか。