11.09.22 // PM 09:22 …


(By横山平馬)




俺と美和子ちゃんはいわゆる、付き合いたてほやほやの若葉マークカップルなわけで。名前以外で彼女の事について知っていることと言えば、彼女の頭の中身が割りと残念で、ちょっとお馬鹿で、リアクションが面白くて、時々凄く可愛い表情を見せてくれるということくらいだと思う。彼女の全部が100だとしたら、きっと俺は2くらいしか彼女を知らないんだろう。――生真面目なケースケだったら、男女交際はお互いをよく知ってからだろう!とか言うんだろうな。

(でもケースケ。付き合う前からお互いのこと全部わかりきってる関係なんて、俺からしたらつまらないよ)

そんな俺が彼女の誕生日を知ったのは本当に偶然である。当日の夕方に知っちゃったもんだから、カップル定番シンデレラタイムにお祝いなんてたいそれたことは当然出来るはずも無く。ぽやぽやしている美和子ちゃんの事だから、お祝いできなくても泣いたり怒ったり俺に殴りかかってきたりはしないんだろうけれど、だからと言ってなにもしない訳にはいかない。なんて言ったって俺達は付き合いたてほやほやの若葉マークカップルなんだから、初めてのイベントは誠実にこなさなきゃ。そして念のために言っておこう、俺は義務でお祝いを考えているわけじゃない。

(どうしたもんかなあ、)

スタートが駄目なら、ラストにお祝い?いやいやそれも少しは考えたけど、起きていられる気がしない。それに何故だがそんなお祝いの仕方を、誰かから極最近自慢されたような気がしなくもない。他人と同じ事をするなんて、俺にはまっぴらだ。メジャーよりマイナー、王道より茨道。それが俺。

そうこうしている内に9月22日は刻々と進んでいく――




(美和子ちゃんは知らないだろうなあ。俺がこんなにきみのことで悩んでるなんてさ。)